重要な一歩 梅原 猛 (哲学者)
韓国全羅南道の芸郷、光州市の美術家の皆さんをお迎えし、「日・韓美術交流」東京展が開催されることを心より歓迎いたします。昨年は公州市、光州市で韓日交流展を行い、今年はこの京都でまた東京でも「交流展」が開催されるということで、隣国である韓国と美術創造を志す方々の間で創作・理論上の交流、また人と人との交流をすすめておられることに想いを深くしております。
日本は歴史的にも朝鮮半島から多くの文化的影響を受けてきましたが、東京は今では世界中の文化が流入し、日本文化の重要な拠点です。この地に抵抗の街・芸術の街としても有名な光州市の美術家の方々をお迎えすることは、美術交流にとどまらず、隣国との歴史的な正負の遺産をとらえなおし、より人間的な関係を築いていく重要な一歩かと思います。
旅をしてその地の文化を直に味わうことで新しい地平が広がることが多々あります。創作・理論上の交流とともに、人と人とが行きかいその地の息吹を肌で感じることはこの上ない交流であり、経験となりましょう。「日・韓美術交流」東京展の成功を願っております。
「日・韓 美術交流展」東京でふたたび―日本美術会代表 渡辺 皓司
昨年2003年9月、光州で、「韓・日 美術交流招待展」が開かれたことは、過去の歴史を乗り越えて、二十一世紀にふさわしい両国の友好と相互理解を深めるうえで、大きな役割を果たしました。海を越えて結ばれたこの糸を、今後さらに太く強くしていくことは、私たちの願いです。
本年は日本の首都・東京で「日・韓 美術交流」東京展が開かれます。第1回展の光州、
第2回展が東京で開かれることの意義は、大きな価値を有しています。相互に両国の文化的伝統を理解しつつ、同時に新しい時代に向けた文化的創造活動を共有できることは、未来の両国の友好と信頼、文化交流の輝かしい実りを暗示しています。これは単に美術家だけの問題ではなく、両国の国民全体の、新しい二十一世紀の課題であると考えます。
いま世界は、美術界を含め大きく動いています。私たち日本美術会も時代の真実を探りながら、会存在の自己確認を問うさまざまの課題を抱えています。
このような時期に、同じ北東アジアの両国が共に自国の文化伝統を検証しつつ、新しい価値の創造に向けて開かれる「日・韓 美術交流」東京展は、私たちの創造活動を鼓舞し、抱える課題に示唆をあたえるものとなるでしょう。
文化の香り高く、自由な精神の発露とその創造表現が、相互に刺激し合い共に心と心が溶け合い、会場の壁一面に花開く姿は、「日・韓 美術交流」東京展の真髄を象徴するものとなるでしょう。それはまた、昨年の光州での人間的な触れ合いの親密さと信頼感を、再現することなのです。
私は、残念ながら光州の地を訪問することができませんでした。しかし今回、東京で光州・全南の美術家の皆様と、親しくお会いできる機会となったことは、心を湧き立たせる大きな喜びです。
「韓・日 交流展」の模索と展望 崇實大 教授・美学 金 光 明
昨年の秋韓日交流展は全羅南道の文化芸術支援プログラム及び「我泉美術館」と「光州・全南美術文化の発展研究会」が共同に企画主幹して、この地域の中堅・重鎮作家達が参与し、日本側は「日本美術会」が柱軸となって名実共に日本を代表するほどの重鎮作家たちが参加したのである。
韓日二国の美術文化の昨日と今日の様子を見せてくれた、前回の光州にての交流展示に続いて、今度は東京のゆかりの地である「セシオン杉並」で開催することになり、これからは内実のある交流の場にと突入したと思われる。
私達は前回の展示会で、光州・全南がもっている芸郷としての象徴性と、民主化の熱情が籠もっている地域として、芸術的雰囲気を満喫でき、特に日本美術会が志向する反戦と平和、自由の理念に積極的に共感した、意義のある場であった。また、日本美術会を通じて、日本の美術状況を部分的だけども接する機会を持つようになったが、今回はその本場でもう一度日本の活発な真面目が見られるようになって、韓国と日本美術の相互理解に大きな力になるだろうと思われる。
全近代的な伝統と現代、それらとポストモダニズムが共存している複合的な芸術状況で、韓・日二国の作家達の多様な流派と理念を超えた芸術活動は、時代精神の進むべき座標をよく示していて、望ましく未来志向的な美的価値の創造に重要な道標になることを祈る次第である。
情報の疎通と文化の交流が頻繁なこの時代に、日本美術会が示してくれた多様な流派の創作技法と、自由な表現内容は、私達にも示唆するところが大きいと思われ、美術文化の交流を通して、私達の共同関心事である相互理解と疎通、平和と繁栄を為せるように期待するのである。
現代の美術文化は地域間の多様な差を前提にして、共存繁栄のための普遍的な価値を求めていくべき課題を持っている。今回の展示を通して、互いの美術文化が追求する美的な価値を体験できる機会をもつことを期待している。
韓日二国が相互の美術文化に対する深い理解と共感に基づき、互いに尊重し実際的に交流協力して、東アジアの美術文化、延いては世界の美術文化発展のために、良い先例になることを期待する。今回の展示・交流のために力を尽くしてくれた日本美術会に深く感謝をし、全羅南道と我泉美術館、そして光州・全南美術文化の発展研究会の献身的な努力に感謝する。
もう一つのグローバル化 永井 潔 (画家)
超大国の利権がリードする経済のグローバル化が問題になっている。それは大国の核兵器独占と結びついて、人類を前古未曾有の大規模な殺し合いに巻き込んでしまった。この
グローバル化の中で各国政府は右往左往するだけで、前途に明るさは何も見えない。
しかし、視野を広げ、視線を政府レベルから民衆レベルに転ずると、別な光景が見えてくる。地球上のいたる所に草の根の文化交流や平和運動がひろがっている。国境を越えて難民救済に出かけるボランティアや、NGOの活動の発展。ここにはもう一つのグローバル化がある。日韓美術交流もこの潮流の一環をなすものであろう。
文化交流に政府が介入すれば必ず失敗する。それは証明済みだ。草の根交流は、政府間交流ほど金や力はないが、未来への豊かな発展性がある。草の根文化交流のグローバル化は、世界史の必然であるからだ。