「表現の不自由展・その後」の展示中止に抗議し、「表現の自由」を守り抜くことを求める声明

日本美術会は、愛知県で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展の一つである「表現の不自由展・その後」が展示3日限りで中止に追い込まれたことに抗議するとともに、展示が継続して公開されることを求めるものです。

この企画展が中止されたのは、河村たかし名古屋市長が愛知トリエンナーレには「10億円を超える多額の税金が使われている」のに、「行政の立場を超えた展示が行われている」として、「即時、天皇陛下や慰安婦問題などに関する展示の中止を含めた適切な対応」を求める抗議文を大村愛知県知事に提出し、3日に大村知事が中止を発表したものです。その理由に、テロ予告や脅迫を含むメール、電話が殺到したとして「芸術祭全体の安心安全、今後の円滑な運営のために判断した」と伝えられています。加えて菅義偉官房長官らが同展への補助金交付の差し止めを示唆するコメントを発表しています。

行政側からのこうした圧力や脅迫への屈服は、表現の自由に対する重大な侵害です。テロ予告や脅迫の方をこそ取り締まるべきで、表現者の側を制限するなど本末転倒もはなはだしいものです。まして、「行政として認められない表現は展示できない」ことがまかり通ることになれば、憲法21条2項が禁じている「検閲」が復活することになりかねない重大な問題です。

検閲の禁止も表現の自由も、あの戦争に邁進していった戦前の時代への深い反省から憲法に明記された大原則です。憲法を変えようとするような政治状況の中で、この憲法の大原則を守り抜くため、立場を超えて表現者としての結束したたたかいをすすめることが大切になってきています。

最近では今回の他にも、美術館による作品へのチェック・警告・撤去などの事例が頻発し、自由な発表を抑制する事態も数多く引き起こされています。 今行政がなすべきことは、自分たちにとって都合の悪いものを隠したりやめさせることではなく、発表された作品に対する自由な意見交換を保証するための公共の場を守り広げていくことです。

戦後まもなくの1946年4月創立された私たち日本美術会は、一貫して「表現の自由を守り、真に人間的な美術を生み出すため」(日本美術会趣旨)努力してきました。表現者として何より大切にされなければならない「表現の自由」を断固として守り抜くため今後とも奮闘するものです。  

 2019年8月4日                                                                            日本美術会代表  冨田憲二
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