目黒美術館の原爆美術展中止に抗議し、開催を求める要望書

 目黒区美術館が4月9日~5月29日に開催を予定していた特別展「原爆を視る1945-1970」が中止されました。その理由は、福島第1原発の事故で「放射線被害を含む原爆と事故のイメージが重なる今は、鑑賞してもらう内容ではない」(中国新聞報道)ということです。

この特別展では、1945年から26年間に発表された原爆に関する絵画や写真、漫画など約600点が展示され、原爆が戦後の日本に与えた影響を見つめ直そうと企画されていたものです。

日本美術会は、1946年に結成されて以降、一貫して「日本美術の自由で民主的な発展」(日本美術会主旨第一項)を目的とし、「人類の生存を脅かす 核兵器廃絶をめざし、戦争と侵略をやめさせ、ファシズムをふせぎ、表現の自由を確保し、平和な世界をつくるために美術家としてあらゆる努力」(同主旨第六 項)をしてきました。

そうしたことから見て、今回の美術展の中止は看過することが出来ないものです。

世界で唯一の被爆国としてまた、その後のビギニ環礁での第五福竜丸の被爆も含めて、原爆は戦後の日本に多大な影響を与え、「NO MORE 原爆」 の声は国民の総意となっていますが、展覧会を視た人たちが原爆にどう向き合い、どう作品群を受け止めていくのかは、あげて鑑賞者の判断に委ねられるべきも のです。本来芸術表現と発表の場は何ものにも左右されず自由であるべきであり、鑑賞以前に恣意的判断をしたり、鑑賞の場を一方的に奪うことが許されるもの ではありません。

まして今回の問題は、福島第1原発の事故を発端としての措置として出されてきていることに芸術・表現・発表の自由などとは異なった政治的意図が働い ていると懸念せざるをえません。今、原発の事故で避難している人々や放射性物質の危険に晒されている多くの人々にとって、原発の安全性の確保と原子力行政 からの転換は緊急・切実です。今回の「原爆と事故のイメージが重なる」という理由は、福島原発の事故のイメージを悪くするといったもので、原発事故の原因 を覆い隠し、事故の究明と再発防止への努力をも追いやるものでしかありません。

私たちは、目黒区美術館がこうした一方的な中止を行ったことに抗議するとともに、開催を決断されることを強く求めるものです。

2011年3月26日

日本美術会