ここメードリングはウイーン中心地より電車で30分くらいの距離で、古くは、ヘンデル・シューベルト・ベートーベンなどが避暑 地として夏の住みかとしたところで、広大な「ウイーンの森」の、南の入り口に位置する。 ピアニストYさんの話から始まった今回の展覧会企画は、千葉の我孫子野外美術展が始まりとも言える。 オーストリアでは今年が日本紹介年とかで、同じ時期にグラーツ市では、規模の大きな日本現代美術展が 開催中と聞いた。とにかく市民レベルでの現地制作美術展が、地元のサポート、画廊の努力もあって、立派に開催された。11日のオープニングにはウイーンか ら多くの オーストリア美術家、地元メードリングの愛好家、自治体の文化担当者、政府の文化担当者も参加しての 暖かなセレモニーが行われた。
アカデ画廊はベートーベンハウス(ここの2階にベートーベンが住んでいた)にあり、江上弘の夫 人で ありピアニストのユミコさんが、記念館の当時のピアノ(本物は博物館)で小コンサートをした、その後、 本多真理子さんの作品への一般参加セレモニーがあった。赤い糸を張りめぐらしたインスタレーション作品。 広田美穂さんは、ビデオ上映と外の庭のインスタレーション作品で、両手の閉じた手を「どっち?」と問う、 地元の住人へのパフォーマンスを映像化した作品。池澤孝はシルクスクリーンの版を壁に並べたものや、 お茶菓子を壁にインスタレーションした作品。江上弘は枯れた木に泥を塗って、外にインスタレーション したドナウ川をイメージした作品。木村勝明は宿舎のあった町Perchtoldsdorfに偶然遭遇した聖体祭の 町並みに並んだ枝をいただいての、インスタレーション作品だった。
画廊の企画に参画して、今回の日本人作家を全面的にサポートしてくれたステファンとビリギッテ さんへ 心からの挨拶を送りたい。またワイン畑がたくさんあって、ホイリゲという新ワインを飲ませる多くの居酒屋、 中世の教会など、ウイーン郊外の山すその町に心から感謝し、展覧会の制作のみならず、得難い体験をさせてもらった「自然・歴史と共同体」というようなその 全体へダンケシェーン。そしてアフビーダゼン!と 心から言いたい心境である。
(文 責・木村勝明)
埼玉県の比企丘陵にある東京電気大学鳩山キャンパスと千年谷公園の二会場で開催した今展 も、今年で4回目を迎えるイベントになった。東京電気大学の理工学 部・ヌエック(独立行政法人国立女性教育会館)などが協力しての国際展であり、今回は10カ国から36作家が参加した。大型台風接近で大雨の降る中、汗水 たらしての野外制作であった。今回は大学の建築科が竹のインフォーメーションハウスを制作、話題を作っていた。近郊の協力者である山口さんの竹林から 200本の太い孟宗竹を切り出しての、アイデアの面白さや初体験の学生達の経験の話など、興味津々な取り組みだった。そういう意味から大学との関係が前回 よりアップしたと言える。もちろん情報社会学科の市野教授のビヤーホールは今年も変わらず繁盛して、海外作家の喉を潤し、インターネットでメールをチェッ クできたし、ガーデンパーティーも屋上であったと聞いている。世界的に見ても面白い取り組みになりつつある理工系の大学のサポートによるアートシンポジウ ムは、古代ギリシアの「シンポジオン」に似ていると思われる。何故ならそれは学者や詩人が集い、ぶどう酒を飲み交わしながら論議した事に端を発すると聞く からだ。そう思うと愉快である。9月10日から来月の10月10日までが会期で、毎土曜日に4回のアートガイド行なわれる。また国際野外の表現展コンセプ ト小品展が「亜露麻ギャラリー」(東松山)と「ギャラリーアーチストスペース」(銀座)で行なわれる。10日には作品をめぐり作家が話すアートガイドが3 時間かけて炎天下で行なわれ、多数の参加があった。5時から大学内の新校舎の広い会場でオープニングパーティーが盛況に開催された。
(問い合わせ先:事務局 TEL/FAX:0493-35-4506) http://www.ioe-hiki.com/
(文責・木村勝明)